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医療福祉施設におけるコミュニティ音楽療法の実践

介護老人保健施設おおつかの郷 立山 真由美(音楽療法士)

 私は医療法人に所属する音楽療法士として、主に介護老人保健施設を拠点に、法人内の複数施設や地域で臨床と地域活動を行っています。医療福祉施設における音楽療法は、病院や施設内で専門職が対象者に支援を行うものとして位置づけられることが多いですが、私が日々感じているのは、対象者のwell-beingにおいて、病院や施設と地域との連続性が非常に重要であるということです。そのため、音楽療法士は施設内での臨床に留まらず、社会とのつながりを意識した働きかけも重要な役割であると考えています。

 

 一般的に「施設の地域開放」や「アウトリーチ」という言葉は、地域住民を対象とする活動を想定することが多いです。しかし当施設では、医療福祉施設内のコミュニティスペースを活用することで、病院や施設から地域生活へ移行する過程にある方々や、軽度認知障害(MCI)やフレイルなど、制度の狭間に位置する方々に対しても活動の場を提供しています。こうした取り組みは、移行期における緩衝的な役割を果たすとともに、地域とのつながりを「処方」として機能させることができると考えています。
 

 このことは、個人の生活の質の向上に寄与するだけでなく、入院患者や施設入所者へのラベリング、エイジズムなど、医療福祉施設と地域との関係性に新たな社会的意識の変容をもたらす試みでもあります。当日は、こうした考え方に基づくコミュニティ音楽療法として、2つの実践例をご紹介させていただきました。
 

 これら2つの実践は、音楽を軸に、多職種と地域住民が対等な関係で関わり合い、「ごちゃまぜ」の交流を生み出しました。その後、コロナ禍を経て、多職種がより主体的に関わる活動形態へと発展し、現在も継続的に維持されています。こうした流れの中で、音楽療法によって築かれた関係性や場づくりを基盤として、活動はさらに多様な形へと広がりを見せており、そのような意味で音楽は人々を引き寄せ、交流や参加のきっかけを生み出す「入口」として、磁石のような役割を果たしていると考えています。
 

 この実践の中で直面するのは、この活動が「音楽療法」あるいは「音楽療法士」としてどのような専門性を有しているのか、そして「なぜ音楽なのか」という問いです。この問いは、発表を終えた後、多くの方々との意見交換や感想を通して、より一層浮き彫りになりました。私は、実践を通して、音楽が生み出す「ゆるいつながり」の価値や意味、その必要性を体験として確信しています。同時に、これらが同じ領域の共通体験の理解に留まっていること、そして他領域の方々に十分に伝わる形で言葉での理解・説明なく実践が拡がることは、その専門職的の存在の危機であることを強く感じています。
今後は、これらの実践を基盤として、音楽療法の専門性やその社会的意義を理論的・言語的に整理し、他領域にも伝達可能な形で提示することが不可欠であると認識しており、これは大きな課題であると考えています。

 

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カロリーカフェ コミュニティ音楽療法
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施設内音楽療法の様子

 

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