リズムと共に輪になる力〜ドラムサークルの可能性〜
横田友子(一般社団法人VMCグローバルジャパン・ドラムサークルファシリテーター研究所代表理事)他
2025年9月、福岡で開催された「これからの芸術療法を考える会2025福岡」の初日最終プログラムとして、「リズムと共に輪になる力~ドラムサークルの可能性」と題したセミナーを担当させていただきました。
本稿では、その開催報告と共に、ドラムサークルの持つ療法的・社会的意義についてご紹介します。
≪ドラムサークルとは?≫
人々は地域や文化を問わず、太古の昔から輪になり、動物の皮を張ったタイコや木の実など、身の回りにあるものを使ってリズムでコミュニケーションしていたと言われています。近年では、そのような行為は人類が言葉を有する遥か以前から行われていたことが明らかになっています。 ドラムサークルとは、その名の通り、輪(サークル)になり、打楽器(ドラム)を用いてその場にいるすべての人がリズムで非言語的コミュニケーションをとるイベントです。私たち一般社団法人VMCグローバルジャパンが提唱するのは、ファシリテーターがガイド役として存在する「ファシリテーティッド・ドラムサークル」です。これは約50年前にアーサー・ハル氏(米国サンタクルーズ在住)によって基礎理論が確立されたもので、当法人は日本人のために日本語でその理論を広めるべく2018年に設立されました(ハル氏も理事として在籍しています)。
≪本セミナーでの実践 ~多様な参加者と共に~≫
今回のセミナーには、芸術療法の実践者、医療・福祉・教育関係者、学生、そして心身に様々な事情を抱える当事者の方々など、多岐にわたる背景を持つ皆様にご参加いただきました。 当日は直前まで正確な人数や構成がつかめない状況でしたが、それこそがドラムサークルの醍醐味でもあります。各人の社会的背景を一切問わず、「リズム」を通してつながることを目指しているからです。
実際のセッションでは、最初の10~15分間の「ドラムコール」と呼ばれる時間帯で全員が打ち鳴らすリズムアンサンブルを見極め、その後約90分間のセミナー時間を共有しました。 そこには「即興」こそあれ「間違い」はありません。地位も名誉も関係なく、誰もが参加でき、かつ誰もが参加しなければ成立しない。それぞれが紡ぐ音の大切さを感じ合い、すべての人が「いまここ(In the moment)」において、心理的安全性を守られたアート創造の不可欠な存在であることが体現できることを目的としました。
私がファシリテーションにおいて大切にしたのは、「Teaching without teaching(教えずして教える)」という理念です。叩く行為によるカタルシス(浄化)や、リズムのエントレインメント(同調)が生む一体感の中で、参加者一人ひとりが「共生するために大切な在り方」に自ら気づき、学び取っていただけるようガイドすることを基本としています。
≪療法的アプローチとしての可能性≫
ドラムサークルは、誰もが楽しめるコミュニティ・イベントであることが基本ですが、その応用範囲は広く、現在では医学や教育学の分野で心身に及ぼす影響についての実証研究が進んでいます。 教育、社会福祉、医療現場、さらには企業のコーチングなど、様々な分野のスペシャリストが当法人の研修に参加されており、大学の授業や医療現場での療法的アプローチとしても導入が進んでいます。
アーサー・ハル氏が確立した「VMC理論」は、現在世界五大陸すべてで実践されており、共通のテキストが様々な言語に翻訳され、世界中で学ばれています。 コミュニケーションとしての音楽、そしてアートとしての音楽。ドラムサークルが持つこの二面性は、これからの芸術療法の可能性を広げる一つの鍵になると確信しています。

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